税理士として正式に登録するためには「会計分野での2年間の実務経験」が必要です(税理士法第3条)
この記事では、税理士登録に至るまでの現実的なキャリアプランを紹介しますので、参考にしてみてください。
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税理士登録に必要な「2年間の実務経験」はどこで積むのが現実的?
税理士法第3条では「租税に関する事務」「会計に関する事務」を2年間積むことが求められています。
↓問題はこの経験をどこで積むのが現実的か?ですが、選択肢としては以下の2つが考えられます。
- 会計事務所で実務修行する
- 一般企業経理として実務修行する
以下、それぞれの選択肢のメリットデメリットを回接します。
1. 会計事務所で実務修行する
ひとつめは、会計事務所(税理士事務所・税理士法人でも同じ意味です)に職員として雇用され、サラリーマンとして仕事をすることで実務要件を満たす方法です。
結論から言うと、ほとんどの人はこの方法を選択しています。
↓現時点で無資格の人の現実的なプランとしては、以下のようなかたちが考えられます。
- まずは無資格の税理士補助として会計事務所に入社する。
- 税理士補助として働きながら税理士試験の科目合格を積み上げていく。
- 3年〜10年ほどかけて税理士試験5科目に合格する。
- この時点ですでに実務要件は満たしているので、税理士登録の手続きを行う。
- 税理士有資格者として転職したり、開業税理として独立したりといったかたちでキャリアアップしていく。
会計事務所では、税務申告書の作成や顧客の財務相談を通じて、実践的なスキルを身につけることができます。
無資格の職員として仕事をする場合でも、会計事務所での仕事内容は税理士とまったく同じです。
(最終的に顧客の税務申告書に担当税理士としてハンコを押すのが、税理士有資格者であるというだけです)
将来的に税理士として独立を目指す場合、会計事務所という職場は実務修行をする場として最適です。
税理士補助として働く期間中に、顧客開拓やネットワーク作りに取り組むことも可能でしょう。
(もちろん、所長税理士とトラブルにならないよう注意は必要ですが)
一般企業の経理として2年間の実務要件を満たす
一般企業の経理として税理士登録のための2年間の実務要件を満たすことも可能です。
税理士法に基づき、「租税に関する事務」や「会計に関する事務」を行うことが実務経験として認められるため、企業の経理部門でこれらの業務に従事することで要件をクリアできます。
企業での経理経験を活かし、税理士資格を目指すことは、キャリアの幅を広げる大きな一歩となります。
企業内税理士としてのキャリアアップも考えられるでしょう。
ただし、将来的に独立して自分の事務所を持つというビジョンを持っている人の場合は、企業経理としての実務経験だけでは不足する可能性が高いです。
独立したら自分の顧客を獲得するための開拓営業も必要ですし、メイン顧客となる可能性が高い中小企業経営者とのコミュニケーション経験がないとなかなか厳しいものがあるでしょう。
税理士会の面接で質問される内容とは?
税理士会の面接では、実務経験の内容や「税理士法第3条」に基づく業務の理解度が問われることが多いです。
特に、「租税に関する事務」や「会計に関する事務」にどの程度携わったかが重要視されます。
面接官は、具体的な業務内容や担当した案件について詳しく尋ね、実務経験が税理士業務にどのように役立つかを確認します。
また、実務経験を通じて得たスキルや知識をどのように活用するつもりか、今後のキャリアプランについての質問も一般的です。
さらに、税理士としての倫理観や、顧客との信頼関係構築に対する考え方も評価の対象となります。
面接を通じて、税理士としての適性や熱意を示すことが求められるため、事前にしっかりと準備をして臨むことが大切です。
面接後1ヶ月で税理士登録(バッジも届く)
上記の面接後、1ヶ月程度で税理士登録が完了します。
税理士バッジなども自宅に届くわけですが、この瞬間は多くの人にとって待ち望んだ瞬間ですね。
税理士会の面接を通過すると、登録が進み、晴れて税理士としてのスタートを切ることができます。
このプロセスは、税理士としてのキャリアを正式に始めるための重要なステップです。
面接では、実務経験や知識に関する質問がされることが一般的で、事前にしっかりと準備することが求められます。
登録が完了すると、税理士バッジが手元に届き、これがプロとしての証となります。
このバッジは、信頼と責任を意味し、クライアントに対して安心感を与える重要なアイテムです。
税理士としての第一歩を踏み出すためには、実務経験をしっかりと積み、面接に必要な知識を身につけることが不可欠です。
面接後の1ヶ月は、新たなキャリアの始まりを迎えるための大切な準備期間となります。
会計事務所で2年間、税理士補助として働くのが現実的
税理士としての実務要件を満たすという目的だけを考えるなら別ですが、
開業税理士として独立して飯を食えるようになるためには、やはり会計事務所で修行して仕事を覚えるのが現実的なルートです。
以下では、会計事務所の税理士補助として働きながら、資格もスキルも持った税理士になるためにはどういう働き方をしていくべきか?考えていきましょう。
まずは税理士としての基本業務をこなせるようになろう
まずは、税理士としての基本業務をしっかりと身につけることが重要です。
税理士としての実務経験を積むためには、日々の業務で「租税に関する事務」や「会計に関する事務」を確実にこなす必要があります。
これらの業務は、税務申告書の作成や決算書の作成、税務相談など多岐にわたります。
特に、税務申告書の作成は年度ごとに法律が変わることも多いため、最新の情報を常にキャッチアップすることが求められます。
実務経験2年を経て税理士登録を目指す人にとっては、これらの業務を通じて基礎を固めることが、後のキャリアに大きく影響します。
現実的には、会計事務所で税理士補助として働くことで、実際の業務を通じて学ぶことが最も効果的です。
実務を通じて得た知識やスキルは、税理士としての「得意分野」を見つける際にも役立つでしょう。
税理士としての「得意分野」を持とう
税理士としてのキャリアを築く上で、「得意分野」を持つことは非常に重要です。
特に実務経験2年を経て税理士登録を目指す方にとっては、専門性を高めることが「現実的」なキャリアアップに繋がります。
例えば、相続税や国際税務など特定の「租税に関する事務」に強みを持つと、クライアントからの信頼を得やすくなります。
また、会計事務所での実務経験を活かし、資産税や法人税に特化することで、競争の激しい業界での差別化を図ることができます。
税理士として成功するためには、単に資格を取得するだけでなく、自分の「得意分野」を意識的に育てることが大切です。
これにより、独立開業や顧客開拓の際にも有利に働くでしょう。
税理士補助(勤務税理士)として働きながら顧客開拓しよう
将来の独立に向けた準備として、自分の顧客を開拓していくことは極めて重要です。
「独立してから開拓」ではリスクが大きすぎますから「あらかじめ顧客開拓をしておいて、ある程度のめどが立ったタイミングで独立」という選択をする人が多いでしょう。
会計事務所での勤務中に、顧客との信頼関係を築くことが成功の鍵となります。
まずは、顧客のニーズを的確に把握し、迅速かつ適切な対応を心掛けましょう。
さらに、専門知識を活かした提案を行うことで、顧客からの信頼を得ることができます。
顧客開拓のためには、既存のネットワークを活用することも重要です。
たとえば、同僚や先輩税理士からの紹介を受けることや、業界セミナーや交流会に積極的に参加して人脈を広げることが求められます。
これにより、顧客基盤を着実に構築することができるでしょう。
独立を視野に入れるなら、早い段階から「WEB集客」のスキルを磨くことも不可欠です。
オンラインでの情報発信やSNSを活用したマーケティング戦略を立て、顧客との接点を増やすことが成功への道となります。
独立するならWEB集客の仕組みづくりは必須
独立を目指す税理士にとって、「WEB集客の仕組みづくり」は欠かせません。
特に、オンラインでの「顧客獲得」は、今や業界のスタンダードとなっています。
SEO対策やSNSを活用し、ターゲット層にリーチすることが求められます。
例えば、ブログやYouTubeを通じて「専門知識」を発信することで、信頼を築くことが可能です。
また、メールマガジンやLINE公式アカウントを用いた「リード育成」も効果的です。
これらの手法を組み合わせることで、持続的な集客を実現できます。
さらに、Google広告やFacebook広告を活用した「有料広告」も視野に入れると良いでしょう。
これにより、短期間での認知度向上が期待できます。
独立後の成功には、こうしたWEB集客の「戦略的な構築」が鍵を握ります。
どういう会計事務所で2年間の実務経験を積むか?は超重要
多くの人は、会計事務所で働いて2年間の実務要件を満たすことになります。
重要なのは「どの会計事務所で2年間の実務経験を積むか」で税理士としてのキャリアがかなり変わってくることです。
↓「修行の場」として会計事務所の選ぶ場合のポイントとしては以下の3つです。
- 得意分野のある会計事務所を選ぼう
- 税理士として「稼げる分野」で働こう(資産税その他)
- 労働環境が劣悪なブラック事務所に注意
こちらも順番に見ていきましょう。
1. 得意分野のある会計事務所を選ぼう
税理士としてのキャリアを築く上で「得意分野」を持つことはとても大切です。
単に税理士資格があるというだけでは、それほど大きな強みとは言えません。
強みが何もない状態で独立しても食えるようにはならないでしょうし、
税理士資格があるというだけで転職活動をしても、それほど年収アップは見込めないでしょう。
(多少は有利になるとは思いますが、年収が一気に何百万円も上がるということはないと思います)
重要なことは、税理士補助や勤務税理士として働いている期間中に、得意分野となるノウハウを学べる事務所に所属して経験を積むことです。
会計事務所の得意分野は、その事務所が持つ顧客層に大きく依存します。
転職活動時には「どういったお客さんがクライアントとして多いか?」についても情報を集めるようにしましょう。
会計事務所選びは、自分の目指す方向性に合った環境を見つけることが成功への鍵となります。
2. 税理士として「稼げる分野」で働こう(資産税その他)
上で「税理士として得意分野を持つこと」の重要性をお話ししましたが、その得意分野は「税理士として稼げる分野」であることが必要です。
税理士の稼げる得意分野としては、まず相続税や国際税務などが考えられますが、すでに有名な事務所が多数あり、競合も強いことは覚悟しておく必要があります。
(この分野で顧客を開拓していくのはかなり大変です)
それ以外の分野で言えば、「特定の業界に特化した税理士」といった強みも考えられますね。
例えば、飲食業に特化して店舗開業や助成金のアドバイスもできる税理士とか、
医業(お医者さん)や美容業、あるいは芸能関係。
不動産業界で他の士業(司法書士など)や不動産仲介業者と人脈を活かして稼いでいくなどです。
といったジャンルで人脈やノウハウを持った税理士は、開業した後も食っていける可能性が高いでしょう。
税理士としてのキャリアを考える際には、自分の興味と得意分野の接点を意識してみてください。
3. 労働環境が劣悪なブラック事務所に注意
どのような会計事務所で実務経験を積むにしても、自分の勤務先として労働環境が劣悪な「ブラック事務所」を選択しないように注意が必要です。
過重労働や低賃金、長時間労働が常態化している事務所では、実務経験を積むどころか、心身の健康を損なう恐れがあります。
また、こうした環境では税理士として必要なスキルを十分に学べない可能性もあります。
雑用ばかりで顧客をなかなか持たせてもらえないとか、
事務所の顧客が個人事業主ばかりで、法人顧客がぜんぜんいない…とかいった状態では、税理士として実務経験を積む場として不適です。
まとめ
税理士登録には2年間の実務経験が必要です。
この経験をどこで積むかは、将来の働き方に大きく影響します。
会計事務所や企業経理など、現実的な選択肢を考えながら、自分に合ったキャリアプランを選びましょう。