「会計事務所で税理士補助として働きたいけど、税理士を目指さないのってあり?」
↑結論から言うと「全然あり」です。
むしろ、税理士を目指さない職員は所長税理士からは好まれる傾向があります。
(必然的に採用されやすいし、出世もしやすい)
この記事では、税理士を目指さないけど税理士補助の仕事に興味がある人向けに、会計事務所でのキャリアの築き方を解説します。
税理士という資格にこだわらず「会計職」としてキャリアアップしていきたい方は、参考にしてみてください。
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この記事の目次
「税理士を目指さない税理士補助」が所長税理士から好まれる理由
税理士を目指さない税理士補助が、所長税理士から好まれるのには理由があります。
↓具体的には以下の3つ。
- 独立される恐れがない(安心して教育できる)
- 試験勉強でなく実務の勉強に集中してもらえる
- 組織の中核として活躍してもらえる
それぞれの内容について詳しく説明していきます。
1. 独立される恐れがない(安心して教育できる)
「税理士補助として採用した職員をいっしょうけんめいに教育して一人前に育てたのに、
税理士試験に合格した途端、独立してしまって今までの教育コストが無駄になる。
さらに、担当させていたクライアントを引き抜いて独立してしまい、事務所の売上が減ってしまう…」
↑会計事務所の経営者である所長税理士にとって、一番避けたい事態というのがこれです。
会計事務所で働く人の多くは税理士として独立することを目指していますから、
教育すればするほど独立されてしまうリスクが高まるというジレンマが常にあるんですね。
この点、税理士補助として働きながら税理士資格を目指さない人は、将来的にも独立される心配がないため、事務所は安心して教育やスキルの提供に投資できます。
長期的に中核スタッフとして事務所に貢献してくれる可能性が高いですから、安定した人材として重宝されるでしょう。
2. 試験勉強でなく実務の勉強に集中してもらえる
所長税理士の立場からすると、職員スタッフ(税理士補助)には試験勉強よりも実務の勉強をしっかりしてほしいというのが本音です。
科目合格を増やすための試験勉強をする時間があるなら、法人税の申告書を書けるようになってほしいし、会計ソフトの使い方を覚えてほしいのです。
この点、税理士を目指さない税理士補助は、試験勉強ではなく実務の勉強に集中してくれるという期待があります。
実務に直接関連するスキルを磨くことに集中してもらえますから、短期間で即戦力となってくれるんですね。
税理士を目指さない税理士補助は、税理士試験の負担がない分ストレスも軽減され、心身ともに健康的な働き方をしてくれるという期待ができるのです。
3. 組織の中核として活躍してもらえる
上で、所長税理士が一番嫌がるのは「職員を一人前まで育てた後に、独立されてしまうこと」だと説明しました。
この点で、税理士資格を目指さない税理士補助は、組織の中核として活躍してもらえるという期待があります。
複数の職員スタッフをまとめる管理職としての役割を期待されることもあるでしょう。
税理士を目指さない税理士補助は、所長税理士の右腕として、充実したキャリアを築ける可能性があります。
会計事務所で「税理士を目指さない税理士補助」として働くメリットデメリット
税理士を目指さない税理士補助として会計事務所で働くことには、メリットとデメリットの両方があります。
↓ここでは、以下のようなことを説明します。
- デメリットは「独立できないこと」ぐらい
- 未経験でも正社員として採用してもらいやすい
- 税理士を目指している職員よりもたくさん仕事ができる
- 資格がなくても社長からは「先生」と呼ばれて大事にされる
- 会計事務所から一般企業の経理に転職することも可能
- ひとつの事務所で経験を積めば、別の会計事務所への即戦力転職も可能
- 会計事務所からコンサル業界などに転職していく人も多い
デメリットは独立できないことぐらい
「税理士資格を目指さない税理士補助」というキャリアを選択する唯一にして最大のデメリットがこれです。
当たり前ですが、税理士資格がないと税理士として独立することはできません。
しかし、全ての人が独立を望んでいるわけではありませんよね。
というか、ほとんどの人はサラリーマンとして地道に生きていくことを選択するものでしょう。
税理士として独立するとは言っても、独立したら自分で顧客を開拓して顧問契約を勝ち取らない限り収入はゼロ円です。
税理士資格はなくとも税理士補助として所長税理士に認められ、ベテラン職員として高い年収を得ている人はたくさんいます。
さらに、税理士補助としての経験を活かし、企業の経理部門や他の職種への転職も選択肢として考えられます。
未経験でも正社員として採用してもらいやすい
そもそも会計事務所では、未経験資格なしの人でも正社員として採用されやすいです。
これに加えて、税理士を目指さない税理士補助は「所長税理士に好まれやすい属性」ですから、さらに採用されやすいと言えるでしょう。
転職活動を有利に進めることが可能ですから、より好条件のホワイト事務所を選択肢に入れることが可能となります。
税理士を目指している職員よりもたくさん仕事ができる
税理士資格を目指さない税理士補助は、税理士を目指している職員に比べて、より多くのクライアントを担当してたくさんの仕事をこなすことができます。
いうまでもなく資格取得のための勉強時間が不要なので、その分を実務に充てることができるからです。
実務経験を豊富に積むことができ、職場での信頼を高めることも可能になるでしょう。
税理士を目指さない選択肢は、実務を通じて自分の強みを伸ばし、キャリアの幅を広げるための賢明な道でもあるのです。
資格がなくても社長からは「先生」と呼ばれて大事にされる
税理士補助は税理士資格を持っていなくても、お客さんから見れば「先生」です。
お客さんである中小企業の経営者は、資格に対して顧問料を払っているのではなく、節税してくれる実務経験や専門知識に対してお金を払っているからです。
特に中小企業の経営者にとって、税務や会計に関する知識は大変貴重であり、信頼できるアドバイザーとして重宝されます。
会計事務所から一般企業の経理に転職することも可能
会計事務所での税理士補助の経験を活かし、一般企業の経理部門への転職を考えるのは非常に現実的な選択です。
会計事務所で培った知識やスキルは、企業の経理業務においても大いに役立ちます。
特に、決算業務や税務申告の経験は、企業の財務管理に直結するため、即戦力として評価されることが多いです。
ひとつの事務所で経験を積めば、別の会計事務所への即戦力転職も可能
会計事務所で働く税理士補助は、どこの事務所でも基本的に同じような仕事をしています。
そのため、将来的にもし今の事務所の人間関係が嫌になった場合にも、別の事務所に即戦力として転職することが可能です。
無資格の税理士補助であっても、実務経験が豊富であれば、新しい職場でも即戦力として評価されます。
会計事務所からコンサル業界などに転職していく人も多い
税理士補助としての経験を活かし、コンサル業界に転職する人も多いです。
会計事務所で培った財務や税務の知識は、会計分野のコンサルタントとしてクライアントの経営改善に役立てることができます。
最近では、後継者のいない中小零細企業の事業承継を支援する「M&Aコンサルタント」などは高年収で魅力的ですね。
これらの職業は税理士資格がなくてもコンサルファームに職員として雇用されれば着くことができますから、税理士試験を目指さない税理士補助にとって魅力的な選択肢といえます。
コンサル業界では、問題解決能力やコミュニケーションスキルが重視されますが、これらは会計事務所での実務経験を通じて自然と身につくスキルです。
税理士を目指さない税理士補助の給料事情
↓税理士を目指さない税理士補助の給料は、以下の金額が目安となるでしょう。
- 未経験入社の場合は年収300万円〜350万円が相場
- 固定給以外に歩合給がある事務所が多い
- 経験3〜5年で年収500万円程度
- ベテラン職員として年収1000万円を稼ぐ人もいる
こちらも順番に見ていきましょう。
未経験入社の場合は年収300万円〜350万円が相場
税理士補助として未経験で入社する場合、年収は300万円から350万円が一般的な相場です。
この範囲は、地域や事務所の規模、個々のスキルによっても異なることがあります。
例えば、東京や大阪などの都市部では生活費が高いため、給与がやや高めに設定されることも少なくありません。
また、未経験者でも簿記の資格を持っていると、初任給が若干上がる可能性があります。
税理士を目指さない場合、給与の上昇は経験年数やスキルの向上に依存するため、どのように自分のスキルを磨くかが重要です。
例えば、企業経理や財務の知識を深めることで、事務所内での昇進や転職の際に有利になるでしょう。
さらに、税理士事務所での経験を活かして、他の会計関連の職種にキャリアチェンジすることも視野に入れると良いです。
税理士試験の勉強をしない分、自由な時間を活用して、業界の最新情報を学んだり、ネットワークを広げたりすることが、将来的なキャリアアップにつながるでしょう。
給与だけでなく、自己成長やワークライフバランスも考慮しながら、自分に合ったキャリアを築いていくことが大切です。
固定給以外に歩合給がある事務所が多い
税理士補助として働く際、固定給に加えて歩合給制度を設けている事務所が多いです。
新規顧問先の開拓や節税提案による手数料収入がその主な要因です。
これにより、自身の努力や成果が直接給与に反映されるため、やりがいを感じやすい環境が整っています。
特に、顧客との信頼関係を築き上げるスキルや、節税に関する知識を活かすことで、収入を増やすことが可能です。
歩合給のある事務所では、固定給だけでは得られない達成感も得られます。
さらに、営業力や交渉力を高めることができ、これらのスキルは他の職種や業界でも役立ちます。
ただし、歩合給制度は事務所によって異なるため、転職時には条件をしっかり確認することが重要です。
自分のキャリアやライフスタイルに合った働き方を見つけるための一つの選択肢として、歩合給制度を活用することを検討してみてはいかがでしょうか。
経験3〜5年で年収500万円程度
税理士補助として3〜5年の経験を積むと、年収500万円程度を目指すことが可能です。
この段階では、会計や税務の実務経験が豊富になり、職場内での信頼も高まります。
税理士資格を目指さない場合でも、経験を活かして経理や財務部門への転職を視野に入れることで、キャリアの幅を広げることができます。
特に中小企業やベンチャー企業では、税理士補助の経験を持つ人材が重宝されることが多く、転職市場での評価も高まります。
また、税務に関する知識を活かし、企業内でのコンサルティング業務に携わることも可能です。
こうしたキャリアパスを選ぶことで、税理士試験のプレッシャーから解放されながらも、安定した収入とキャリアアップを実現できます。
さらに、簿記やファイナンスに関する資格を取得することで、さらなるスキルアップを図ることが可能です。
これにより、将来的な収入の増加や職場でのポジションアップも期待できます。
ベテラン職員として年収1000万円を稼ぐ人もいる
税理士補助として働き続けることで、キャリアの幅を広げることが可能です。
特に、経験を積んでベテラン職員となれば、年収1000万円を超えることも夢ではありません。
税理士資格を取得しなくても、専門的な知識やスキルを高め、事務所内での信頼を築くことで高収入を得る道が開けます。
経理や財務の知識を深めることで、企業の経理部門や財務部門への転職も視野に入ります。
実際、税理士事務所での経験を活かし、企業内で要職に就くケースも少なくありません。
さらに、税理士事務所内での昇進や、他の事務所への転職を通じてキャリアアップを図ることも可能です。
このようなキャリアパスを選ぶことで、税理士試験のプレッシャーから解放され、より自由な時間を持つことができるのも大きなメリットです。
自分のペースでスキルを磨き、長期的なキャリア形成を考えることが重要です。
「なぜ、税理士を目指さないのですか?」と聞かれた時の答え方(志望動機の例文)
会計事務所の税理士補助の求人に応募する人の多くは、将来的に税理士を目指している受験生です。
そうした人の中で「税理士を目指さない」という人は少数派といえます。
会計事務所の面接では「なぜ、税理士を目指さないのか」という理由(志望動機)を質問される可能性が高いですから、回答をしっかり準備しておきましょう。
↓志望動機の回答の例文としては、以下のようなものが考えられます。
- 税理士資格そのものより、中小企業経営者のサポートに興味がある
- 税理士試験の勉強より、資金繰りや経営戦略などを広く勉強したい
- 独立は将来的にもおそらく検討することがない(組織の一員として働きたい)
税理士資格そのものより、中小企業経営者のサポートに興味がある
「私は、税理士資格の取得そのものには強い関心がなく、それよりも中小企業の経営者の方々をサポートする実務にやりがいを感じています。
企業の現状や課題を数字を通して把握し、それを解決するための提案を行う仕事に大きな魅力を感じています。
特に、税務や会計の知識を活かして経営者の方の意思決定をサポートし、企業の成長に貢献できる存在になりたいと考えています。
そのため、実務を通じて幅広い経験を積みながら力をつけていきたいと思っています。」
税理士試験の勉強より、資金繰りや経営戦略などを広く勉強したい
「私は、税理士の資格を取得することよりも、資金繰りや経営戦略、事業計画の策定といった幅広い分野を学びたいと考えています。
税務の知識にとどまらず、経営者の方々が抱えるさまざまな課題を総合的にサポートできるスキルを身につけたいです。
特に、会計事務所での実務経験を通じて現場の声を直接感じることで、自分自身を成長させながら企業の成長に寄与したいと強く思っています。」
独立は将来的にもおそらく検討することがない(組織の一員として働きたい)
「私は、独立志向ではなく、組織の一員としてチームで働くことにやりがいを感じるタイプの人間です。
会計事務所で働くことで、企業や経営者をサポートしながら、自分も組織の中で長く経験を積んでいきたいと考えています。
特に、複数の視点を持つ仲間と協力して、さまざまな課題に取り組むことでより良い成果を生み出せると信じています。
組織の中で自分の役割を全うし、企業の成長を支える一助となることに全力を尽くしたいです。
まとめ
今回は「税理士を目指さない税理士補助」というキャリアの選択肢について解説しました。
税理士を目指さない選択肢は、会計事務所の経営者である所長税理士からは歓迎される可能性が高いです。
組織内でキャリアアップしていきたいタイプの人にとって、有力な選択肢といえますから、ぜひ検討してみてください。