「会計ソフトが便利すぎる。マネーフォワードや弥生会計があれば、顧問税理士なんていらないかも…?」
最近の会計ソフトってめっちゃ便利ですよね。
銀行取引はデータで同期して仕訳を自動で入れてくれますし、レシートもスマホアプリで写真撮ってこれも自動仕訳です。
これだけ便利なら、高い顧問料を払って税理士を雇う必要なんてないのかも?と思ってしまいますよね。
ですが、結論から言うとそういう理由で顧問税理士をクビにするのはやめた方が良いです。
残念ながらほとんどのケースで「会計ソフトさえあれば税理士はいらない」とまではならないんです。
今回は、会計ソフトをわりと使いこなせている社長さんや経理担当者さん向けに、税理士の使いどころについて解説します。
ぜひ参考にしてみてください。
こちらの記事もおすすめ
「マネーフォワードや弥生会計があれば税理士は不要!…」には残念ながらならない理由
残念ながら「会計ソフトさえあれば税理士は不要」とはなりません。
会計ソフトさえあれば税理士いらないタイプの人も中にはいますが、そういう人はものすごく少数派というのが現実ですね。
(なお、必ずしも「優秀な社長だから税理士がいらない」わけではありません)
↓ここでは、以下のような理由について説明します。
- 会計ソフトへの入力は「ひとつの工程」にすぎない
- 確定申告や法人決算以外にも、年末調整や社会保険など煩雑な手続きは多い
- 税理士がいないと気付けない節税対策がたくさんある
- 税理士がいない会社には税務調査が入りやすい
- 消費税の計算と申告は知識がないと難しい(そしてミスがあった場合に税務調査が入りやすい)
- 銀行との融資交渉や助成金申請で不利になる
- 常に精神的に不安…
それぞれの理由について見ていきましょう。
1. 会計ソフトへの入力は「ひとつの工程」にすぎない
会計ソフトへの入力は、税金の申告が完了するまでの「ひとつの工程」に過ぎません。
ソフトは確かに便利で、自動仕訳やレポート作成をサポートしますが、税務申告や法的な手続きには専門的な知識が必要です。
会計ソフトはデータを整理し、見やすくするツールであり、最終的な判断や細かな調整は人間の手が不可欠です。
特に税務に関しては、法改正や特例措置が頻繁に発生するため、常に最新の情報を把握している税理士のサポートが重要です。
税理士は、節税対策や税務調査への対応など、ソフトではカバーしきれない部分を補完します。
したがって、ソフトの活用は有効ですが、税理士の役割を過小評価してはいけません。
2. 確定申告や法人決算以外にも、年末調整や社会保険など煩雑な手続きは多い
確かに、会計ソフトへの入力作業が正確にできていれば、確定申告や法人決算はほとんど「ボタンひとつ」で完了できます。
ですが、会社が行う必要のある税金や会計関連の手続きは、他にもたくさんのものがあります。
(年末調整や社会保険など)
特に「年末調整」は従業員がいる企業にとって避けて通れない作業です。
これに加えて「社会保険」の手続きも必要で、従業員の入退社があるたびに関連書類の作成と提出が求められます。
さらに、労働保険の年度更新や給与計算の見直しも定期的に行わなければなりません。
これらの手続きは、法令に基づいて正確に行う必要があり、ミスがあると罰則を受ける可能性もあります。
会計ソフトでの「自動化」が進んでいるとはいえ、すべてをカバーできるわけではありません。
特に法改正があった場合は、最新の情報に基づいて対応する必要があります。
こうした多岐にわたる手続きを効率的に行うためには、専門的な知識と経験が求められます。
税理士や社労士といった専門家のサポートを受けることで、企業は本業に専念できる環境を整えることができるでしょう。
3. 税理士がいないと気付けない節税対策がたくさんある
税理士がいないと気付けない節税対策は、実際に多く存在します。
例えば、税金の控除や免除の制度は多岐にわたり、最新の法改正に対応することは容易ではありません。
特に中小企業においては、税理士の専門知識が重要です。
税理士は、会社の状況に応じた「最適な節税方法」を提案できます。
例えば、交際費の扱いや減価償却資産の計上方法など、細かな部分での節税が可能です。
また、税理士は税務調査のリスクを最小限に抑えるためのアドバイスも行います。
これにより、企業は安心して本業に専念できるのです。
税理士のサポートがないと、知らず知らずのうちに税務上のミスを犯し、結果的に多額の追徴課税を受けるリスクも増します。
したがって、税理士の存在は、企業経営において非常に重要な役割を果たしています。
4. 税理士がいない会社には税務調査が入りやすい
税理士がいない会社は、税務調査が入りやすいとされています。
これは、税務署が「申告内容の正確性」を懸念するためです。
特に、会計ソフトだけで「税務処理」を行っている場合、ミスや不備が見つかりやすくなります。
例えば、マネーフォワードのような会計ソフトは便利ですが、完全に税理士の役割を代替することはできません。
税務調査では、所得の過少申告や経費の過大計上などがチェックされます。
税理士がいれば、これらのリスクを事前に回避することが可能です。
また、税法は頻繁に改正されるため、最新の情報に基づいた正確な申告が求められます。
税理士はこの点でも有用な存在です。
税務調査は会社の信頼性にも影響を与えるため、税理士のサポートを受けることで、安心して事業運営を続けられるでしょう。
5. 消費税の計算と申告は知識がないと難しい(そしてミスがあった場合に税務調査が入りやすい)
消費税の計算と申告は、特に経験が浅い個人事業主にとっては「難しい」作業です。
消費税率の変更や軽減税率制度の導入により、計算は一層複雑化しています。
会計ソフト「マネーフォワード」を利用すれば、ある程度の自動化は可能ですが、法的な細かい規定や特例の適用には「注意」が必要です。
申告書の作成や提出の際に誤りがあると、税務調査が入りやすくなるため、正確性が求められます。
税理士を利用することで、こうしたリスクを軽減し、安心して事業に専念できる環境を整えることができます。
税理士の費用はかかりますが、ミスによる追徴課税やペナルティを避けるための「投資」と考えると、決して無駄ではありません。
6. 銀行との融資交渉や助成金申請で不利になる
銀行との融資交渉や助成金申請において、税理士の存在が重要です。
特に「マネーフォワード」などの会計ソフトを利用していると、税理士が不要と考える方もいますが、実際にはそう簡単ではありません。
税理士は、金融機関に対する「信用力」を高める役割を果たします。
金融機関は、財務諸表の信頼性を重視し、税理士が関与していることで、数字の正確性が担保されると考えます。
また、助成金申請では、複雑な要件をクリアするためのアドバイスが求められることが多く、税理士の知識が役立ちます。
さらに、税理士は最新の「税制改正」にも精通しており、これが助成金の取得や融資条件の交渉において大きな強みとなります。
税理士のサポートを受けることで、企業の「資金調達力」を向上させることが可能です。
7. 常に精神的に不安…
常に精神的に不安を感じる要因として、税務や会計の複雑さが挙げられます。
会計ソフトである「マネーフォワード」や「弥生会計」は便利なツールですが、これらを使いこなすには一定の知識が必要です。
特に、税務申告や決算処理の際にミスをすると、後々の税務調査で問題になる可能性があります。
このようなリスクを避けるために、多くの企業は税理士に依頼しています。
税理士は専門的な知識を持ち、最新の法改正にも対応しているため、安心して任せられます。
しかし、税理士を雇うことがコスト的に難しい場合、自ら学び、適切な対策を講じることが求められます。
このような状況下で、精神的な不安を軽減するためには、信頼できる情報源を活用し、必要に応じて専門家に相談することが重要です。
「会計ソフトがあれば税理士が不要な人」ってどんな人?
会計ソフトさえあれば税理士が不要な人も、中にはいます。
↓ですが、それは以下のような条件を満たす場合に限られます。
- 自力で税務申告まで完結した経験が豊富にある人
- 会計や税務が好き&本業もあまり忙しくない人
- 従業員がゼロで一人でやっている小規模な個人事業主
- 常に赤字でほぼ税金が発生しない人
こちらも順番に見ていきましょう。
1. 自力で税務申告まで完結した経験が豊富にある人
会計や税務の知識が豊富で、自力で税務申告を完結できる人や、
過去に何度も自ら手続きを行ってきた経験がある人は、
マネーフォワードなどの会計ソフトを駆使して、確定申告や法人決算まで自力で行うことも可能でしょう。
経理を自分完結することで、税理士費用が不要となり、コストを大幅に削減できるのが大きなメリットです。
ただし、税法は毎年のように改正されますから、最新の情報を常にキャッチアップしていることが求められます。
また、税務申告にはミスが許されないため、細心の注意を払って作業を進める必要があります。
しかし、税務調査に対する心構えや、万が一のエラー発生時の対応力も必要不可欠です。
これらの要素をクリアできる人のみが、税理士を必要とせずに、安心して事業を運営できると言えます。
2. 会計や税務が好き&本業もあまり忙しくない人
会計や税務が好きで、本業があまり忙しくない人は、顧問税理士を雇う必要はないかもしれません。
会計ソフトは自動仕訳機能がありますから、日々の取引を簡単に記録できます。
税務申告書の作成もサポートしており、確定申告を自力で行う際の強力な助けとなるでしょう。
ただし、こうした作業からは1円も発生しないことに注意が必要です。
社長の仕事は売上を上げて利益を出す仕組みを作ることですから、
会計や税務にあてる時間があるなら、会計や税務は税理士に費用を払って丸投げし、
こうした仕組みづくりに時間と労力を振り分けた方が良いケースが多いです。
3. 従業員がゼロで一人でやっている小規模な個人事業主
従業員がゼロで一人でやっている小規模な個人事業主にとって、会計ソフト「マネーフォワード」は非常に便利なツールです。
会計業務を効率化し、日々の経理作業の負担を軽減してくれます。
しかし、税理士のサポートが不要と考えるのは少々早計かもしれません。
確定申告や消費税の申告など、税務に関する専門知識が必要な場面は多々あります。
税理士は、税務に関する最新の知識を持ち、節税対策や税務調査への対応など、個人事業主にとって重要なアドバイスを提供してくれます。
また、税理士がいることで、税務調査が入りにくくなるという安心感も得られます。
会計ソフトと税理士の双方を活用することで、より安定した事業運営が可能になるでしょう。
4. 常に赤字でほぼ税金が発生しない人
常に赤字でほぼ税金が発生しない人にとって、税理士を雇う必要性は低いと言えます。
赤字が続く場合、課税所得が発生しないため、そもそも税金を納める必要がありません。
また、多少間違えた申告をしても、税務調査が来る可能性が極めて低いです。
税務調査は税務署の職員がわざわざ事業所を訪問して行うものです。
当然ながら税務署側もコストをかけて行うものですから、それに見合っただけの追徴課税を取れなければ、やる意味がないのです。
(赤字でそもそも税金の支払い義務が発生していない会社や個人事業主からは追徴課税は取りようがありません)
しかし、税務申告や会計処理の正確性を確保するためには、税務の知識が必要です。
マネーフォワードのような会計ソフトを活用すれば、日々の記帳や経費管理は容易になりますが、税務調査のリスクを完全に排除することはできません。
ただし、過去に利益が出ていて、今季初めて赤字になる…と言うようなケースでは、税理士に依頼をした方が良いでしょう。
この場合には、「欠損金の繰戻しによる還付」というかたちで、過去に収めた税金を返してもらえる可能性があるからです。
この場合には、正しい形で申告をする必要がありますから、税理士に代行してもらうのが適切でしょう。
税理士費用が高すぎる…と感じる場合の対処法
税理士費用が高すぎると感じる場合でも、対処方法を工夫すればコストを抑えることが可能です。
ここでは、以下のような方法について説明します。
- 記帳については格安の代行業者を使う(トータルで顧問料を減額させる)
- 自社の身の丈(規模)に合わない税理士を選ばないこと
- 最低限のサービスで良いなら月次訪問は無しにする
- 相見積もりは必ず行おう
- 税理士紹介業者に間に入ってもらうと顧問料が安くなる
1. 記帳については格安の代行業者を使う(トータルで顧問料を減額させる)
記帳代行(会計ソフトへの入力作業)だけを格安で請け負っている代行業者があります。
記帳についてはこの代行業者に格安で依頼し、月次決算と税務申告は顧問税理士に依頼すると言うかたちをとることで、
トータルで支払う顧問料(代行業者に払う顧問料+税理士に払う顧問料)を削減できるケースがあります。
税理士にとっても記帳業務をよそに代行してもらい、税務申告作業だけに業務を集中できることはメリットがあるケースが多いでしょう。
2. 自社の身の丈(規模)に合わない税理士を選ばないこと
自社の規模に合わない税理士を選ばないと、相場よりも高い顧問料を取られてしまう可能性があります。
例えば、社長一人でやっているような会社や個人事業主で、最低限の税務申告だけを依頼する場合には、月次顧問料は1万5000円程度が相場でしょう。
一方で、ある程度の規模の会社(売上数千万円〜数億円程度で、従業員10名以内など)では、月次顧問料は2万5000円〜4万円程度になります。
一人会社や個人事業主が、大規模企業とたくさん顧問契約をしているような税理士事務所や税理士法人に依頼してしまうと、
相場よりも大幅に高い顧問料を請求されて損をする…というケースも考えられますから注意しましょう。
自社に合った税理士を選ぶことで、安心して事業に専念できる環境を整えることが大切です。
3. 最低限のサービスで良いなら月次訪問は無しにする
最低限のサービスで良いなら、税理士の月次訪問を省略する選択肢もあります。
日常の経理作業(記帳業務や月次試算表の作成)はマネーフォワードなどの会計ソフトを活用して自力で行い、
年に1回の確定申告や法人税申告業務だけを税理士に依頼するというかたちですね。
税理士にとっても、月次訪問はコストがかかるので避けたいケースが多いです。
特に、小規模な事業者の場合には、会計や税金面でアドバイスできることがとても少ないので、
月次訪問してもやることがない…なんてことはよくあることなのです。
もちろん、税理士の月次訪問がないことで、コミュニケーションの機会が減少し、重要な情報を見逃す可能性もありますが、
最近は日常の疑問などについてはリモートで対応してくれる事務所がほとんどですから、
こうした仕組みも活用しながら顧問料を下げる交渉ができないか試してみるのが良いでしょう。
4. 相見積もりは必ず行おう
相見積もりを行うことは、税理士費用を抑えるための重要なステップです。
これから税理士を探す人は、複数の税理士事務所に相談して見積もりを取り、サービス内容や料金を比較してください。
税理士事務所(税理士法人)のホームページでは、顧問料の具体的な金額を明示していないケースがほとんどです。
これは、顧問先の業種業態によって税理士側の業務負担が大幅に異なるからで、一概に「この金額」という提示の仕方が非常に難しいからなのです。
そのため、顧問税理士を選ぶときには、5社〜10社程度に自社の状況を相談してみるのが適切です。
どんなに忙しい人でも、最低3社からは見積もりを取りましょう。
比較をしないことには適切な顧問料の落とし所を交渉することができません。
5. 税理士紹介業者に間に入ってもらうと顧問料が安くなる
顧問料を少しでも抑えたい方は、税理士紹介業者を通じて税理士を探すのが良いです。
税理士ドットコムなどの業者を使えば、顧問料の相見積もりも自動でやってくれますよ。
紹介業者は、多くの税理士と提携しているため、顧客のニーズに合った税理士を紹介することが可能です。
また、紹介業者を介して顧問契約すると、
初回の相談料や契約手数料が無料になるキャンペーンを実施していることも多く、コスト面でのメリットが大きいです。
税理士費用を抑えたい方にとって、紹介業者の活用は一つの有効な手段です。
まとめ
このブログ記事では、会計ソフトをかなり使える社長さん向けに、税理士の使い所を開設しました。
会計ソフトはとても便利になっていますが、税理士がいないと気づけない節税対策はいろいろあります。
利益がしっかり出ている会社で自力で税務をやっていると、税務調査が入りやすくなるというリスクにも注意が必要です。
税理士と会計ソフトは、用途に応じてうまく使い分けることが大切ですね。